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ディステルBIO+の歩み

誕生

初代店主がフランクフルト初の有機食品の店をボッケンハイム地区に開いたのは1970年

当時、自然農法と言えば宗教色が濃く、その一方でヒッピーと呼ばれる人たちに支持される特異なカテゴリーでした。

 

他にオーガニック/BIOに特化した店舗がなかったことから、1987年に同じボッケンハイム地区のHomburger Str.へ移転した際には、正規雇用スタッフを多く抱える店に成長。対面販売でチーズやハムも扱い、品物は仕入れても仕入れても間に合わない。

そんなサクセスストーリーがありました。

 

が、時に急激な成功は人間関係を複雑に変えてしまうもの。

スタッフが店を離れ出した頃から、大手資本が続々とBIOに参入して来ました。

 

やがて店は転売。二代目は事業を縮小して、ディステルは店主一人の「ワンマンショップ」となります。

 

その後、店の付近に大型BIOスーパーマッケットが二店も開店して、ますます厳しい状況となり、経営は更に悪化。二代目は郊外の住宅地へ引っ越しました。

 

三代目はグラフィックデザイナー。

フランクフルト在住の恋人を追って、北ドイツのハンブルグから来ました。

自分一人分の衣食住が足りればいいというBIO的なスタンスで、静かに店を続けました。

四代目は日本人

2011年。三代目もまた、経営に行き詰ります。

ある日、店のドアには「お客さんを大切にしてくれる後継者を募集」という紙が貼られました。

 

人づてにこの話を聞いたとき、まさか自分たちが引き継ぐことになるとは思いませんでした。

むしろ、実務経験のない外国人が、専門店の経営などするべきではないと考えたほどです。

 

このような時期に、ある大きな出来事が起こりました。

3月11日に起きた東日本大震災です。

 

宮城、岩手に親類縁者が多く住まうわたしたちは、その消息がつかめなかった直後の10日間、昼夜を問わず衛星放送とネットのニュースを見続け、出来る限りの方法で行方を探しながら、水や食料が足りないという現実を目の当たりにします。

 

水と食料は生きるために必要な条件です。

シンプルで、一番大切なものです。

 

それを扱う仕事が持つ意義と使命を感じました。

 

繰り返し映し出される津波の映像に衝撃を受けながら、一時的にせよ、店の倉庫を被災した方々に使っていただけるのではないかとも考えました。

 

幸い、そうした事態には至りませんでしたが、この出来事がわたしたちを奮い立たせたのです。

2011年からのディステル

2011年3月末、片倉店長は先代の下、無給・無休で働くという、まさに体を張った修業に励みます。

同年6月、品数の少ない、蜘蛛の巣だらけの暗い店は、わたしたちの名義になりました。

その1か月後、業務用冷蔵庫を振り出しに、3代目から買い取った機器や備品が次々と壊れていく事態が発生。

当時はコスメを仕入れることなど、とても考えられませんでした。

 

2012年からは「オーガニックで健やかに美しく」という願いを込めて、お茶とコスメを徐々に増やしはじめます。

 

2013年には日本人スタッフを採用、初の5人体制になりました。

しかし、ネットショップをスタートさせた直後の7月、窃盗事件が発生。全てのPCと周辺機器、データ、プロジェクターを失います。

プライベートでは、日本から来て、いつもそばにいて、支え続けてくれた愛犬まる(上の画像)が永眠。

悲しみにくれました。

同年秋、その悲しみを救うべくドイツ生まれの柴犬、ラクがやって来ました。

 

2014年は地道に試飲を重ねてワインを買い足し、100種類まで揃えます。

物置だった部屋をセミナールームに改造してワインセミナー、アロマオイル講座、料理教室、ドイツ語・英語コースを開始。

ラクはいつしか店のマスコット犬になりました。

 

2015年、チェコ生まれの黒柴そのがラクの相棒に。

  

2018年、ディステルはディステルBIO+として、オペラ座付近のKleine Hochstr.へ移転。

大型ディスカウント系スーパーのオーガニック製品参入の波に押されて生鮮食料品の扱いを取り止め、コスメ中心に切り替えました。

 

2020年1月、パンデミック。

世界中が静まり返り、店は存亡の危機に陥りました。

 

2022年2月、長く苦しいパンデミックが沈静化して安堵したのもつかの間、ロシアがウクライナに侵攻。

エネルギー問題や食料不足の懸念から物価が高騰し、人々の買い控えが進み、店は更なる窮地に。

 

2023年9月、ディステルは旧市街のBerliner Str.に移転。

「日本人のセンスで選んだナチュラルな良品」をコンセプトに、有名無名を問わず、志のあるメーカーやアーティストの発掘に一層励むことに。

フランクフルト市民の台所であるクラインマルクトハレに近いこともあり、食器、希少なオーガニックの抹茶、日本酒、果実酒にも重きを置く方向へ。

より独自な路線へ

2024年、香炉や茶器に留まらず、サスティナブルな日本の布文化を広めるため、上質な風呂敷や手ぬぐい、今治タオルの輸入販売を開始。

オーガニックの麹、味噌、醤油、漬物など、発酵食品の普及活動と開発もしています。

フライヤー.pdf
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